月のひととき


伊良部大橋に向かう緩やかな坂道で、バックミラーへちらりと目を向けると、東の空に月の欠片が浮かんでいるのが視界に入った。 空の低いあたりには初夏の雲が浮かんでいる。その日の満月は雲に隠れて、わずかばかりの顔を出しているのかと思った。そうではな... View Article

冬のひかり


飛行場まで母を迎えに行った帰りに、少し遠出して、伊良部島にあるカフェへ立ち寄った。 まず運ばれてきた前菜には、庭先で採れたような素朴な島の野菜が品よく盛り付けられている。酢で軽くしめ、素材の風味が活きている。畑いじりが好きな母は気に入るだろ... View Article

平良西里 イーザト・ノスタルジア


十六日祭に親族であつまったとき、叔父が写ルンですを持ってきていて、宮古島にもフィルム現像できるお店が残っているんだなあと思っていたところ、叔父は現像を頼むと言って帰ってしまった。 さいわい下里通りを平良港へとくだる坂のとちゅうに、フィルム現... View Article

東平安名崎 暁の月

東平安名崎 暁の月


帰郷したら撮りたいと思っていた風景がいくつもある。朝焼けの海もそのひとつだ。 この日は、前の日からすがすがしいほど晴れた空で、天気予報でも明日は晴れ、この日を逃せばしばらく雨になるだろうという、梅雨のあいまの晴天だった。 日の出時刻の一時間... View Article

東平安名崎 百合の季節


島には季節がない、と人はよく言う。けれども帰郷して一年たつと、少しずつだけど、島には島の季節があることに気づかされる。 色とりどりに花が咲くのが5月の初旬ごろ。太陽がのぼりおりする方角が少しずつ変わって、夕焼けの空もほんのり桃色に色づく。ト... View Article