二月、三月の不安定な雷雨が過ぎると、島を彩る花の季節が訪れる。東平安名崎に白いテッポウユリが咲き乱れ、整地されたキビ畑に向日葵が明るい色を広げる。赤いグラジオラスが畑の脇にぽつぽつと花を咲かせるのもこの頃。忙しいのを言い訳にしているうちに、... View Article
夏の夜半過ぎ、明るい月が西に傾くと、東の空には低くオリオン座が姿を現す。月のまばゆい空だけれど、明るい星々は際立ってかがやいて見えた。 遠くの星がちかちかと明るさを強めたり弱めたりするのを見て、ふと気がついた。そういえば星はまたたくものなの... View Article
伊良部大橋に向かう緩やかな坂道で、バックミラーへちらりと目を向けると、東の空に月の欠片が浮かんでいるのが視界に入った。 空の低いあたりには初夏の雲が浮かんでいる。その日の満月は雲に隠れて、わずかばかりの顔を出しているのかと思った。そうではな... View Article
春になると、うっすら空が霞がかかる日がある。遠く中国大陸の砂が、春になって乾いた地表から気圧におしあげられて舞い上がり、上空高く吹く風にのって、この小さな島までやってくる。 「微生物の箱舟」ともいわれる黄砂には、大気汚染物質が含まれていると... View Article
飛行場まで母を迎えに行った帰りに、少し遠出して、伊良部島にあるカフェへ立ち寄った。 まず運ばれてきた前菜には、庭先で採れたような素朴な島の野菜が品よく盛り付けられている。酢で軽くしめ、素材の風味が活きている。畑いじりが好きな母は気に入るだろ... View Article
中学校にあがって自転車登校ができるようになると、学校からの帰宅路、おしゃべりの尽きない友人につきあって、となりの吉野集落を経由して帰ることがしばしばあった。 吉野から保良へと向かう道は、たまに軽トラが通り過ぎる程度ののんびりした道で、自転車... View Article
島にもどってきた時、おさない頃のほとんどを過ごした家は既になく、道路拡張のため取り壊された我が家の代わりに、集落のはずれに建てられた一軒家が、故郷の家となっていた。 むかしは寂しい雰囲気だったこのあたりも、今はぽつぽと新築の家が建ち始め、さ... View Article
その日はいつ降り出してもおかしくない風のつよい曇り空で、いつでも戻せるように小屋のちかくの空き地につないで、草をはむ彼らをながめていた。 空から降りそそぐ光は、いつの間にか冬のものに変わっている。草に一心不乱のヤギたちに、心のどこかで引... View Article
十六日祭に親族であつまったとき、叔父が写ルンですを持ってきていて、宮古島にもフィルム現像できるお店が残っているんだなあと思っていたところ、叔父は現像を頼むと言って帰ってしまった。 さいわい下里通りを平良港へとくだる坂のとちゅうに、フィルム現... View Article
帰郷したら撮りたいと思っていた風景がいくつもある。朝焼けの海もそのひとつだ。 この日は、前の日からすがすがしいほど晴れた空で、天気予報でも明日は晴れ、この日を逃せばしばらく雨になるだろうという、梅雨のあいまの晴天だった。 日の出時刻の一時間... View Article