島には季節がない、と人はよく言う。けれども帰郷して一年たつと、少しずつだけど、島には島の季節があることに気づかされる。
色とりどりに花が咲くのが5月の初旬ごろ。太陽がのぼりおりする方角が少しずつ変わって、夕焼けの空もほんのり桃色に色づく。トワイライト・ゾーンの時間帯、夕暮れが青みがかるのもこの季節だ。
連休に入って、その日は天気も良く、海に沈む夕日が見れるかもしれないと東平安名崎に行ってみた。残念ながら、水平線にたなびく雲で夕焼けは見れなかったけれど、空の色は初夏のもので、とてもきれいだった。
青色に沈んでいく空気のなか、テッポウユリの白は、ぽつぽつとともる灯りのようにも見えた。
冬がほどけて季節が変わるころ、島に吹く風は東からのものになる。屋敷のどの窓から風が流れ込んでくるかで、風の向きに気づくのだ。
「東風吹かば 匂いおこせよ梅の花」とは菅原道真の詠んだ歌で、東風とは春を告げる風ということなのだなあと今さら気づいた。東からの風には、芽吹いた草花の香りが感じられる。
冬のあいだ南で過ごしたサシバなど渡り鳥が、北へ向かうため島で休息するのも4月ごろ。なにかと命の騒々しさを感じさせる季節でもある。
島じゅうの小さな命たちがうごめく季節。ときおりの激しい雨の日をへて、長雨の続く梅雨にはいる。その合間の晴れの日に、だんだんと強まる日差しに気づかされる。
夏に向かって、夕暮れの色は赤みがかった色へと熟れていく。その予兆が感じられる4月の東平安名崎だった。
連休明けてまもなく、先島地方も梅雨入りとなった。まずは雨の少ない梅雨のはじまりだけど、雲のカーテンのむこうにはぎらぎらした日差しが待っている。
夏になると島の空や海は、またちがった色をみせてくれるにちがいない。うつろう季節の一瞬を、少しでもフィルムにおさめられるといいなと思っている。